筆者は今まで、「お墓ディレクター」として、50件以上のお客様の改葬や分骨に関わってきました。
改葬や分骨は一生に一度するかどうかのことで、不安に思われる方もいらっしゃいます。
ですが、そこまで難しいものでもありません。
一つずつ順番にやっていけば、どなたでもできるものなのです。
書類の作成や提出を行政書士さんが5万円や10万円で代行していますが、もったいないです。
自分でやれば無料です。また、信頼できる石材店を見つければ協力してくれることもあります。
皆さんが安心して改葬や分骨ができるよう、「終活カウンセラー」でもある専門家の筆者が改葬と分骨の方法や注意点についてお伝えします。
「改葬」と「分骨」の違い
「改葬」は簡単にいうと「お骨の引っ越し」です。
現在、お墓や納骨堂に納めている遺骨を全て、別のお墓・納骨堂に移すことを「改葬」と言います。
全部持っていくのが「改葬」と思ってください。
「分骨」は、その名の通り「骨を分ける」ことです。
現在、お墓や納骨堂に納めている遺骨の一部分を、ほかの場所に移すことを「分骨」と言います。
一部分を分けるのが「分骨」です。
「改葬」や「分骨」が行われる背景・理由
背景については、先日書いた記事を参照します。
「お墓」や「納骨堂」は、跡継ぎがいて、その跡継ぎが守っていくことが前提の供養方法です。
現在の成熟した日本社会では、進学・就職・転勤・転職など で、生まれた場所、育った場所、学んだ場所、働いている場所が全て同じという人の方が珍しくなってきています。海外で働き、暮らす人もますます増えています。
都市(東京)への一極集中により地方は疲弊し、定年後に地元に帰るといったことも少なくなっていくでしょう。
「跡継ぎが地元に残り墓を守る」といった文化に無理が生じてきているのです。
改葬・分骨のおもな理由はこちらです。
- 地元に戻る予定がなく、先祖の墓を今住んでいるところの近くに移したい
- 年を取り、車ではなく公共交通機関でお墓参りできるところに移したい
- 複数のお墓をまとめたい
- 道路が通るなど、現在の墓地が区画整理事業の対象になった
- お墓の維持管理が難しく、別の供養方法にしたい
- 分骨して兄弟それぞれで親の供養をしたい
- 分骨して一部分を手元供養にしたい
「改葬」の手続きや進め方
改葬をする場合、改葬先と改葬元の距離が遠いかと思います。
電話や郵送で対応できるものと、直接出向く必要があるものがあります。
順調にいっても2か月くらいの期間がかかると考えてください。
①改葬先(新しい納骨の場所)を決める
次の受け入れ先が決まっていることを証明する「受け入れ証明書(墓地使用許可証)」を、新しい霊園の管理人や、お寺の住職に発行してもらってください。
自治体によっては、次の埋葬先が決まっていないと、改葬の許可をださないこともあります。海洋散骨は埋葬先にはなりませんので、遺骨を納めている場所から出して散骨することが難しいこともあります。
②改葬元の市区町村で改葬許可申請書を受け取る
現在のお墓・納骨堂がある市区町村で「改葬許可申請書」をもらいます。
インターネットからPDFやエクセルの形式でダウンロードできる市区町村もあります。
『〇〇市 改葬許可申請書』と検索すると出てきます。
環境課や環境保全課といった課が担当のことが多いです。
市町村の代表番号に電話して、「改葬のことについてお聞きしたい」と伝えれば、親切に対応してくれます。
ダウンロードできなくても、郵便小為替を送れば郵送してくれるところもあります。
書類の形式は、市区町村によって違いますが、見本があることが多いので安心してください。ほとんどの方はご自分でできます。
また、生きている人の戸籍と違い、厳しくチェックされることも少ないです。
明治や大正時代のご先祖様の情報など、わからない箇所は「不明」と記入で大丈夫です。
③改葬元の寺院・霊園に埋蔵(収蔵)証明書をもらう
「埋蔵(収蔵)証明書」は、「改葬許可申請書」の中の一部分になっていることも多いです。
改葬元の管理者に署名・捺印をしてもらいます。
霊園や共同墓地は管理人さんと連絡するだけでスムーズにいきます。
お寺の場合は、すんなりいくケースと揉めるケースがあります。
改葬で一番大変と言われているところです。
ここは、慎重に、電話で挨拶をしてから、直接訪問をして丁寧に事情を説明することをお勧めします。
お寺からすると、檀家が減るということは収入源が減るという生活に関わってくるところです。経験上、都会の檀家が多いところよりも、田舎の檀家が少ないところのお寺の方が揉めるケースがあるような気がします。
よく聞かれます離檀料と言われるものの相場は10万円から15万円くらいです。
これは、お墓の魂抜きをする法要のお布施とは別です。
法律上は支払いの義務は全くありません。
なお、お墓の改葬の場合は、改葬元のお墓を解体し更地にして、霊園やお寺に返さなくてはいけません。その霊園の管理者や住職に石材店を紹介してもらい、解体工事にかかる費用を見積もりしてもらいましょう。その際、可能であれば、2社紹介してもらい、合い見積もりすると工事の費用が安くなります。
紹介でない石材店の場合、その墓地での工事に慣れていないため、他の家のお墓を傷つけて賠償問題になることもあります。また、そのようなことが起こるケースを恐れて霊園や寺院が知らない石材店の工事を認めないこともあります。
また、墓地の土地は売ったり、他人に譲ることはできません。
④改葬元の市区町村で改葬許可証を発行してもらう
「改葬許可申請書」を受け取った改葬元の市区町村に、「改葬許可申請書」・「埋蔵(収蔵)証明書」・「受入証明書(墓所使用承諾証)」を提出すると、「改葬許可証」を発行してもらえます。
ここまでくれば、あともう少しです。
⑤出骨(しゅっこつ)と遺骨の移動
骨壺をお墓や納骨堂から取り出します。
魂抜き(閉眼供養)をしてください。石材店によっては、魂抜きをしないと工事をしてくれまん。(バチが当たると怖いので)
改葬先に持っていくときは、遠方でも郵送せず、新幹線や飛行機で持っていく方がいいでしょう。航空会社にあらかじめ連絡すれば、どうすればいいか教えてくれます。
⑥改葬先での納骨
改葬先に「改葬許可証」を提出し、納骨します。
納骨の際は、魂入れ(開眼供養)をします。
お盆やお彼岸の時期は、お寺が忙しいことがあります。
親戚とお寺の都合を早めに聞き、余裕をもったスケジュールで納骨をすることが望ましいです。
分骨の手続きについて
分骨は改葬より、単純で書類も少ないです。
最初から分骨する場合
兄弟でそれぞれ両親の供養をしたいといった場合や、お墓や納骨堂に遺骨を納めるけれど、手元供養もしたいといったような、最初から分骨を決めている場合は、火葬する前に葬儀会社や火葬場に連絡してください。必要な書類を準備してくれますし、困ることはほとんどありません。
すでに納骨しているところから分骨する場合
現在、お墓や納骨堂に遺骨を納めていて、そこから一部分を出骨したいという場合、墓地の管理者から「分骨証明書」を交付してもらいます。
自治体が運営している霊園は市区町村に、民間霊園は管理者に連絡します。
共同墓地やお寺の場合は、分骨証明書の書式がないことが多いので、自分で書式を準備する必要があります。
私が調べた限りで、一番使い勝手がいいのが、大分県宇佐市が作ってくれている分骨証明書です。
次の受け入れ先に電話をして、必要な書類を確認してから準備をしましょう。
改葬許可証・分骨証明書の手続き方法のまとめ
「改葬」や「分骨」は慣れない用語がでてきたり、複数の関係者と連絡を取りながら、進める必要があるので、非常に困難な印象を持たれる方がいらっしゃいます。
しかし、私の今までの経験で、無事に改葬を終えられた方は、とても安心し晴れやかな表情になっていらっしゃいます。「やってよかった。ありがとう!」と話されます。
この記事を読まれているということは、なんとかしたいとインターネットで検索されたのではないかと思います。
あなたがやらなければ、残された人や次の代の人が苦労します。
気持ちを強くもって、一歩踏み出されることを応援しております。
本日は「改葬許可証・分骨証明書の手続きと方法」についてお伝えしました。
お墓じまい(お墓の解体工事)がある場合は、このような行政手続きをセットで格安でやってくれるサービスがあります。
資料請求をしてみるといいかもしれません。
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それでは。
▼改葬や分骨の際、手元供養を検討される人もいます
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